友達の成功を見るのが、
こんなにつらいなんて思わなかった。
お祝いの言葉が並ぶ画面をスクロールしながら、
胸の奥だけが冷えていく。
ちゃんと拍手しているはずなのに、
心のどこかで黒いものが動く。
「すごいね」と言いながら、
私は何をしているんだろう、
と立ち止まる。
成功。嫉妬。つらい。
きれいごとでは片づかない感情が、
静かに沈んでいく夜があります。
これは、そんな夜の話です。
画面の向こうで輝く成功と、止まったままの私

SNSで見た、同級生の「おめでとう」投稿
梅雨の合間の、蒸し暑い夜でした。
高校生の娘がリビングでテスト勉強をしていて、
私はその横でスマホをいじっていました。
なんとなく開いたInstagram。
通知の赤い丸に吸い寄せられるようにタップすると、
高校の同級生の投稿が目に入りました。
「長年の夢だったサロンをオープンしました」
白い壁にドライフラワー、
木目のカウンター。
笑顔で写る彼女の横には「祝・開店」の花。
場所は吉祥寺駅の近くと書いてありました。
コメント欄は
「すごい!」
「さすが!」
「ずっと応援してたよ!」
の嵐。
私は地方の団地で、週3日のパートをしている。
スーパーのレジで、
夕方はひたすらバーコードを通す毎日。
娘の塾代を考えてシフトを増やそうか迷っている、
そんな夜でした。
画面の中の彼女は、
遠い国の人みたいに見えました。
「おめでとう」と書きながら、胸の奥がざわつく

指は勝手に「おめでとう!」と打ちました。
でも、送信ボタンを押したあと、
胸の奥がじくじくと痛みました。
成功。夢の実現。自分の店。
どれも、私がどこかで諦めてきた言葉でした。
羨ましい、というより、悔しい。
いや、違う。
嫉妬だと思います。
まぶしさに目がくらんで、
目を細めたくなるような、そんな感情。
同じ高校を出て、
同じように就職して、結婚して。
あの頃は横一列だったはずなのに、
いつの間にか、
こんなに差がついていたのかもしれない。
私の毎日は、
洗濯と弁当とレジ打ちでできている。
彼女の毎日は、
夢と挑戦と「おめでとう」で、
できているように見えました。
比べるつもりなんてなかったのに、
気づけば心が勝手に計算を始めていました。
こんな私は、性格が悪いのだろうか

友達の成功を素直に喜べないなんて。
大人なのに、母親なのに、情けない。
娘には「人と比べなくていい」と言っているくせに、
いちばん比べているのは私かもしれない。
努力してきたのは彼女だし、
私は何もしてこなかっただけ。
そうやって、
自分を責める声が頭の中で何度も繰り返されます。
「つらい」と感じる資格なんてないのかもしれない。
成功しているわけでもないのに、
嫉妬して落ち込むなんて、
ただのわがままなんじゃないか。
そんなふうに思って、
スマホを伏せました。
まるで、黒い感情を隠すみたいに。
それは性格の問題なのか、それとも立場の問題なのか

私はもともと、こんなにねじれていただろうか
お風呂で湯船に浸かりながら、
ぼんやり考えました。
天井の水滴を見つめながら、
「昔の私はどうだっただろう」と。
二十代の頃、まだ子どももいなくて、
時間も体力もあった頃。
友達の昇進や結婚を、
こんなふうに苦しく感じただろうか。
もしかしたら、
今の私だから、
つらいのかもしれない。
パートの契約更新にびくびくして、
夫の収入も決して安定しているとは言えなくて、
老後のことを考えると息が詰まる。
そんな毎日の上に、
誰かの「成功」が降ってくると、
心の余白が一気になくなる。
余裕がないところに、
まぶしい光が差し込むと、
影も濃くなるのかもしれません。
嫉妬は、立場が生んだ反応なのかもしれない

嫉妬って、
性格の悪さだと思っていました。
でも、もしかしたら違うのかもしれない。
ずっと我慢してきたこと。
諦めた選択。
言い訳しながら閉じてきた夢。
それが、誰かの成功を見た瞬間に、
「本当は悔しかった」と顔を出す。
押し入れの奥にしまっていた箱が、
ふいに落ちてくるみたいに。
私はただ、
自分の現実と向き合うのが
しんどかっただけなのかもしれません。
成功している彼女が悪いわけじゃない。
なのに、胸がつらいのは、
私の心が弱いからではなく、
今の立場がぎりぎりだから。
そう思ったら、少しだけ、
呼吸が楽になりました。
それでも消えない嫉妬と、どう並んで歩くか

スマホを閉じる、小さな距離の取り方
大きなことはできません。
前向きにもなれません。
でも、できることがひとつだけありました。
しばらくInstagramを開かないこと。
情報を断つなんて大げさだけれど、
心がざわつく場所から、少し離れる。
それだけで、波は静かになります。
もうひとつは、
嫉妬している自分を否定しないこと。
「ああ、私、羨ましいんだな」
と声に出さずに認めるだけ。
それから、レジで常連さんに
「いつもありがとう」
と言われたことを思い出す。
小さなことだけれど、
私の毎日も、ゼロではないと確認する。
人生を変える方法なんてわからない。
でも、心の温度を少し下げることなら、
できるかもしれません。
成功は遠くても、私の時間は続いていく

彼女の成功は、
これからもきっと続いていくのでしょう。
見るたびに、
また胸がざわつくかもしれません。
嫉妬は、消えないと思います。
消そうとすればするほど、
濃くなる気もします。
でも、ずっと真正面から浴びなくてもいいのかもしれない。
斜めから見るとか、
少し距離を置くとか。
そんな関わり方も、あっていい。
私の人生は、派手ではないけれど、
今日もちゃんと続いている。
娘の「お腹すいた」という声や、
洗濯物の柔軟剤の匂いみたいに、
地味で現実的な時間。
それを「失敗」
と呼ぶ必要はないのかもしれません。
あなたのそのつらさは、間違いじゃない

もし今、誰かの成功を見て、
胸がぎゅっと苦しくなっているなら。
それはあなたが意地悪だからでも、
努力不足だからでもないと思います。
それだけ、
真面目に生きてきた証なのかもしれない。
諦めたことがあるからこそ、
まぶしさが刺さるのかもしれない。
嫉妬はきれいじゃないけれど、
嘘でもない感情です。
無理に「おめでとう」を増やさなくていい。
無理に前を向かなくてもいい。
ただ、「つらいよね」と、
自分に小さく言ってあげる夜があってもいいのだと思います。
私も、今夜はスマホを伏せて、
少しだけ静かなほうを向いてみます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
このブログでは、
嫉妬・劣等感・焦りといった
できれば感じたくない感情について書いています。
もし今、この気持ちがまだ残っているなら、
近い感情の記事も、ここに置いておきます。
